フラットデザインが流行る理由

フラットデザインが流行る理由

Webデザイン界でもっぱら話題のフラットデザイン。
あるサイトで「なぜ多くのサイトで使われ始めてるのか → 単に流行ってるから」みたいな内容を見てクラッと来て、その流行ってる理由まで考えないとフラットデザインに「使われる」だけになっちゃうんじゃな~い?と思って筆を執った次第。

他のブログ等でも手法・ノウハウの記事はよく見かけますが、本質が意外と他所で語られていなかったのもあるので、ぶっちゃけたく思います。

デザインマネジメントに優れている

これに尽きます。

見た目にシンプルでキレイとか、視認性が優れているとか、そうした小手先・戦術レベルの話より、スタートアップのスピードと変化への対応が楽といった戦略レベルのメリットの方が、採用される理由として大きいです。

リッチなデザインでは繊細な表現が多くなり、デザインの管理が属人的になりやすいです。その属人的な面の管理にアートディレクターさんは悩むことも多いんじゃないでしょうか。

デザインガイドラインやルールを最初に作りたがる人もいますが、ルールは作るにも浸透にも時間がかかります。
日々改善・刷新が行われるスタートアップではデザインが大幅に変わることも少なくなく、細かい表現ルールは作るだけ時間の無駄です(少なくともスタートアップのステージでは)

  • 属人性を排除した単純明快なルール
  • 劇的な変化に素早くに対応できる

フラットデザインは上記の定義に当てはまるのでスタートアップに最適ですが、Webデザインにおいてベストの手法かというと、ケースバイケースだとも言えます。

フラットデザインのデメリット

作る過程でのデメリットは少ないですが、その見た目からのデメリットはあります。

手抜きに見られやすい

ベタ+画像orテキストの繰り返しが多くなると、お客さんから見たら手抜きに見られやすくなります。
※お客さんに限らず、日頃凝ったクリエイティブを行う人にも手抜きに見える場合もあるようです。

これは見せ方の問題で、フラットデザインであっても写真やイラストを適所に差し込んだり、レイアウトを工夫して全体の調和を取ることで美しく見せることはできると思います。

見た目ほど簡単ではない

パーツ単体を作るのに時間はかかりませんが、全体の調和を取るには普通にデザインするのとさほど変わりません。

むしろ要素が少ないので、その調和を取るには誤魔化しの効かない力量が必要です。
和食しかりペペロンチーノしかり、シンプルなものほど作り手の力量がモロに出ます。

インパクトある見た目に走りがちな初級者デザイナーほどおろそかにしがちな、余白、行間、文字間、カーニング等々、目に見えない箇所のデザインが必要です。

ですがお客さんからすれば楽そうに見えるので、ボッタクられてるように思われてしまう可能性もあります。

ユーザビリティが高いわけではない

フラットデザインは視認性が高いだけで、ユーザビリティが高いわけではありません。

世間一般のフラットデザインの代表は道路標識や駅の案内板で、視認性は高いですが「操作」が考えられていません。画一的すぎるフラット化はのっぺらぼうになるので、視認性は高くとも操作性を下げる可能性もあります。従来通りきちんと操作性を考える必要があります。

所感

フラットデザインは寿司のようなデザインだと思います。

一目で作り方の分かるシンプルさで、基本的な作り方はすぐ身につきます。
しかしネタ(コンテンツ)の味はモロに影響しますし、繊細な味を整えるには職人の力量も必要です。

今の形の握り寿司の起源は、江戸時代に屋台で提供されたファストフードです。
誰でも作れてすぐ食べれるので、開業・提供・回転率、すべての面でスピードがあり商売的に優れていたので流行したのでしょう。
単においしいから流行ったのではありません。フラットデザインもそれと同じ道を歩んでいます。

「それなり」のレベルであれば誰でもすぐ習得でき、より高いレベルも追求できるといった、間口の広さと奥の深さを併せ持つので、スタートアップから円熟期までステージを選ばず利用でき、管理も楽なのでディレクション・マネジメントに優れています。

iOS7にも採用されますし、ここまで広まるのは「キレイだから」みたいな表現レベルの理由では絶対にありえず、マネジメントレベルでの効果が実証されつつあるからだと思えます。

リリーススピードを高められるメリットは提供者とユーザの双方にあるので、変化とスピードが求められる時代に合った優れた手法なのだと思います。

しかし機能的に優れ流行っているとはいえ、例えた通り寿司のようなデザインです。
世の中、コッテコテな中華やエレガントなフレンチを求める人も多いです。

自社サービスを最大スピードで回すには現状ベストとも言えるデザイン手法ですが、クライアントワークとしては、上記に挙げた論点をお客さんに説明するのは難しいですし、知ったこっちゃないでしょう。

あくまで手段に過ぎないので、選択肢の一つとして適材適所で使っていくのが一番ではないでしょうか。

筆者について

KaBuKi
ゲームとジョジョを愛するファミッ子世代。好きな言葉は「機能美」。
公私ともにWebサービスを作る系男子。